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国民皆年金を考えるA〜所得再分配について

国民皆年金を考える上で、「所得の再分配機能」は欠かせないものとなっています。以下、所得再分配の機能の意味、国民皆年金を支える上での必要性についてみていきます。

 

所得の再分配とは税金や社会保障を通じて高所得者から低所得者への富の分配を行うことを目的としています。社会保障には公的年金、医療保険、介護保険、雇用保険や児童手当などの手当て、生活保護など、その他、社会保障はすべて所得の再分配機能が働いているといえるでしょう。また、税金においては高所得者は高い税金を支払っているため、税金も所得の再分配機能を有しているといえます。

 

しかし、近年、日本では急速な少子高齢化が問題となっており、平成25年の総人口に占める65歳以上人口の割合は25.1パーセントと過去最高となっています。まさに4人に1人が高齢者ということです。
このように高齢者世代の増加、現役世代の減少により、様々な問題が起きてくるわけですが、公的年金、とりわけ国民年金においては保険料の増加と給付の減少により若年者世代の不公平感が高まっています。
国民年金や介護保険などは世代間における所得の再分配機能が強く働いているからです。所得の再分配機能は所得の多い世帯から、少ない世帯への分配も行われていますが、若年世代が感じる不公平感というのは主に、世代間における再分配機能に対するものだと思われます。

 

では、若年者世代が感じる年金における「不公平感」というのが実際の給付と負担からみて本当に不公平なのか私なりに検証してみます。

 

まず、所得の再分配機能は公的年金の分野だけではありません。再分配機能は年金分野だけでなく、医療保険、介護保険、生活保護、保健所が行う乳児検診等、また、児童手当などにおいても働いています。ですから、公的年金の分野だけをみて公平、不公平とはいえないと思います。しかし、ここでは、若年者世代が感じていると「不公平感」というのを看過できない問題だと感じています。私見ですが、それが年金保険料不払いにつながっているのでは、と考えるからです。また、正規雇用以外の増加、特に、パート、アルバイトで雇用され厚生年金未加入、かつ、生活が苦しいため、年金保険料を支払わない方もいると思います。

 

所得再分配は、本来、現役世代、高齢者世代、高所得者、低所所得者全体で機能していかなくてはなりません。高齢者でも高所得者、低所得者がおりますし、現役世代においても高所得者、低所得者がおります。
ですが、年金においては主に退職後に受給する「老齢年金」が中心になってくるため、現役世代に対する再分配機能が弱いということになります。ここで、一つ確認しておきたいのが、年金は「老齢年金」だけでなく「障害年金」「遺族年金」もあるということです。「障害年金」や「遺族年金」は高齢者世代だけのものではありません。その点は、あまり、認知されてない方がおられるのではないでしょうか。

 

ここで、「ジニ係数」を用いて「所得再分配機能」をみてみましょう。
ジニ係数とは所得や資産の分配不平等、偏りを図る指標のをあらわします。ジニ係数は0に近いほど低く、つまり係数が高いほど所得格差があるということがわかります。

 

国民皆年金、皆保険を考えるA〜所得再分配について
出典 厚生労働省「再分配所得調査」200年調査の数値 

 

左の水色のグラフが当初所得(雇用者所得や事業所得、農耕・畜産所得、財産所得、家内労働所得及び雑収入並びに私的給付(仕送り、企業年金、生命保険金等の合計額)の合計額)

 

右の網掛けのグラフが再分配所得(当初所得から税金、社会保険料を控除し、社会保障給付(現金、現物)を加えたもの)

 

この図を見ると若年層では当初所得と再分配所得の差が小さい。つまり、再配分を行っても所得格差がさほど解消していないということです。
しかし、60歳以上世代になりますと、当初所得と再分配所得の差が大きく、ジニ係数が大きく改善していることがわかります。つまり、高齢者世代では当初所得ではジニ係数が高くとも、再分配機能が働いて、所得格差が減少しているということがこの表からわかります。

 

この図をみる限り、若年世代は再分配機能の恩恵を十分に受けていないといえるでしょう。

 

さらに、低所得者への所得再分配機能はどの程度働いているかについて、国際比較の上みてみましょう。

 

給付と負担に占める所得下位層のウエイト

 

管理者
平成21年 年次経済報告 内閣府

 

 

(1)の図は間接税を除く税・社会保険料の負担全体に対して低所得者層(所得下位20パーセント層)がどのくらい負担をしているかその割合。

 

(2)の図は公的移転給付全体に占める低所得者層(所得下位20パーセント層)への割合。ただし、この割合には医療や介護、保育サービスなどの現物給付は含まれていないため単純に他の国と比較はできません。

 

この図を見る限り、低所得者への所得分配はうまく行われていないように見えますが、上記の記載のとおり間接税の負担割合、現物j給付の給付割合が考慮されてないことを考慮してみなくてはなりません。

 

最後に、私見ですが、以上の点を見る限り、所得再分配機能は主に高齢者において機能を発揮していて若年世代では効果が薄いと見て取れます。
国民皆年金の持続性を考える上で公平性、公平感というこたは重要だと思いますが、年金だけでなく、子育て支援、雇用など全般的な社会保障を充実させることで広い意味での公平性を考えていく必要があるのではないかと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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