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脱退手当金の歴史と女性に関する考察〜過去には結婚祝い金もあった、旧厚生年金時代

今回は女性と脱退手当金に関する年金問題についてみていきたいと思います。
脱退手当金と聞くと一昔前(昭和30年代から40年代くらい)に結婚した女性が結婚前に勤めていた会社を辞めた後請求した一時金というイメージがあります。確かに、この時代は多くの女性が脱退手当金を請求しました。しかし、このことが現在において問題となっています。
この時代の女性は結婚したら二度と働かないものと思われていたようです。私の親世代がこのような感覚でしたね。しかし、実際は結婚後も再就職する女性は多く、脱退手当金をもらった期間が合算対象期間となり被保険者期間とは認められるが年金額には反映されないことになり「もったいなかった」と思われている方が多いと思われます。その後脱退手当金のの制度は昭和61年4月1日に廃止されています。

 

以下、平成10年10月9日年金審議会における国民年金・厚生年金保険制度改正に関する意見(抄)の中の資料「女性のライフスタイルの変化等に対応した年金の在り方に関する検討会報告書資料編」を基に脱退手当金とはどのような経緯で創設され改正されていったかみてみようと思います。

 

脱退対手当金とは?

脱退手当金は昭和17年労働者年金発足当時すでに創設されており、この時の受給要件は3年以上20年未満の被保険者期間を有する人が死亡又は資格喪失後1年を経過した際に再び被保険者となることがなかった人を対象としていました。この当時の労働者年金の被保険者は現業部門の男子のみでしたので脱退手当金の対象者も当然男性のみでした。
その後、昭和19年になりますと労働者年金から厚生年金保険へと名称が変わり女性も被保険者となり、それに伴い「結婚手当金」という脱退手当金の前身と思われるものが創設されました。ただし、これは昭和22年に廃止されました。
さらに、昭和23年になりますと脱退手当金の支給をもう少し制限しようということでしょうか、脱退手当金の受給要件が厳しくなりました。必要な被保険者期間が3年以上から5年以上へと変わり、50歳以上でないと請求できないという年齢制限ができました。ただ、被保険者が死亡した場合と6月以上の被保険者期間を有する女性に関しては年齢制限はなく、女性に関していえば昭和22年に結婚手当金が廃止されたことから、その代わりに女性のみ脱退手当金の年齢制限を無くそうというこということになったのでしょう。
以後昭和29年には本格的に厚生年金保険制度がはじまり脱退手当金の受給要件が厳しくなっていますが、この時代すでに「脱退手当金は老齢年金受給の機会を奪うものであり廃止すべき」との声があがっていました。しかし、この時は急に廃止することは社会情勢からみていかがなものか(通算老齢年金がなかったなどの理由で)となり、存続となりました。

 

以上の歴史をみてわかることは脱退手当金は「掛け捨て防止」で創設され、それは通算老齢年金が整備されていなかったということが大きな理由ということがわかります。

 

昭和36年における国民年金制度(国民皆年金)と通算年金通則法の制定

 

昭和36年になりますと国民皆年金制度がはじまり男性も女性も性別にかかわりなく年金に加入することができるようになりました。しかし、会社員の妻(主に専業主婦)は任意加入となりました。また、通算年金通則法が制定されたことから脱退手当金の受給要件が厳しくなりましたが(現在と同様に厚生年金の被保険者期間5年以上老齢年金の受給資格を満たさず60歳になり被保険者でないこと)、まだ脱退手当金の廃止とならず、後々、この当時の女性の被保険者期間の短さの原因となる要素がこの頃からみてとれます。昭和36年は年金制度における転換期でしょう。

 

昭和40年は再び女性のみ脱退手当金の受給要件緩和のなぜ?

 

昭和40年になりますとなぜか女子に限り昭和29年の規定が復活し「女子は2年以上の被保険者期間があれば年齢に関係なく脱退手当金を請求できる」となり多くの女性が結婚退職を機に脱退手当金を請求しました。しかし、昭和61年4月1日からは基礎年金の導入とともに専業主婦も第3号被保険者となり脱退手当金もようやく廃止されました。
昭和40年代はまだまだ結婚したら寿退職をし家庭に入るというのが一般的な考え方でしたから「脱退手当金」というのもこの当時としたら普通の考え方だったのかもしれません。

 

今後も年金は時代に応じて変化していくのかもしれませんが、長期的な観点から改善していくのが望ましいのではないかと考えます。

 

ちなみに現在も脱退手当金は昭和16年4月1日以前の生まれの方のみ請求することができます。日本年金機構のHPにより確認することができます。